タクシー運転手

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ハトのとおせんぼ

駅のタクシーの待機場から道路に出る動線上に、ハトの溜まり場がある。

 

誰かがエサでも撒いてるせいなのかよくわからないが、昼頃になると彼らはそこでよく地面をつっついている。

 

何も考えてなさそうなキョトンとした表情で、呑気に地面をつついて道をふさいでいる。

 

腹立たしい。

 

休日なら全く気にも留めないが、仕事の時は別。

 

お客さんを乗せている時は特にだ。

 

お客さんから「急ぎめでお願いします」なんて急かされてる時に道をふさがれていたら「あぁぁぁもぉぉ~~!」と叫びたくなる。

 

もちろん彼らを轢くわけにはいかないので、そばを通る時は速度を緩める。

 

お客さんからしたら「え?なんで今ブレーキ踏んだの?」と思われかねない。

 

踏み潰さないように、そろりそろりと慎重に車を前進させ、いよいよハトがボンネットで見えなくなる。

 

ここから先はハトの動きに任せるしかない。

 

もちろん彼らも死にたくないだろうから、ちゃんと退いてくれるのだが、ここでも苛立ちポイントが…

 

それは、ボンネットで見えなくなるまで彼らはその場を退かないことだ。

 

ハトの身体全体が確認できる間に退いてくれるならまだいいが、彼らはボンネットで見えなくなるなるまで退かない。

 

せめて、一時的にボンネットで姿が見えなくなったとしても、姿が見えるように飛び立ってくれれば、とりあえず退いてくれたことが確認できるからまだいい。

 

しかし彼らは、ボンネットで見えなくなってからチンタラと歩いて(?)その場を離れる。

 

車がギリギリまで迫ってくるスリルを楽しんでるのだろうか…

 

本当に腹立たしい。

 

そんなわけで僕は、ハトの安全を確認しながら安心感をもって通過する、というのが不可能なのである。

 

一方で、ハトはハトなりの事情があるのかもしれない。

 

彼らは野生動物であり、我々人類と違って、いつでも食べたい時に食べられるわけではない。

 

もしかしたら、やっとの思いでありつけた獲物を取り逃すまいと、周囲なんか気にも留めず一心不乱に食べているのかもしれない。

 

もしも願い事が3つ叶うなら、なぜギリギリまで車が来ても退かないのか、真意を聞いてみたい。