僕は運がいい。
これは、運に救われた話である。
コンビニのトイレで用を足し終わる約10秒前に、ノックの音が。
ここは多機能トイレのため、ノックで応答することが出来ない。
声にだして「入ってまーす」と返事するのはちょっと恥ずかしいし、もう間もなくトイレを出るので、そのままにした。
すると、再度ノック音がする。
「ん?」
今度はドアをガチャガチャし始めた。
(いやいや、こっちは小の方だよ?…時間かかったってせいぜい20~30秒だよ…なんならノックの主さん、僕がトイレに入る姿みてたんじゃないかってくらいの時間しか経ってないぞ…え?よっぽど緊急事態なの?)
なんて思っている間にもガチャガチャが続く。
だんだんと怖くなってきた。
急いでチャックを閉めてトイレを流して扉を開けると、底には70代くらいだろうか、白髪の優しそうなおじいさんがいた。
そのおじいさんは「ほんと、すいません」といいながら頭を下げてトイレに駆け込んで行った。
変なあんちゃんから「長すぎるんだよこのタコ!」みたいに怒鳴られるかと思っていたので、内心ホッとした。
…とはいっても、待ち時間をどんなに長く見積もっても20~30秒であそこまでガチャガチャやるか?
使用中って知っててドアをガチャガチャ引いてたってことなのかな?
間違いなく「すいません」って言ってたけど、もしかして急かしていたこと自覚してたってこと?
今回は小だったからまだ良かったけど、もしこれが大だったとしたら、考えるだけでゾッとする。
やはり僕は運がいい。